■■■ baby03  ぼくはくまのままでいたかったのに ■■■




vol-65
   本のタイトル: ぼくはくまのままでいたかったのに……
   イエルク・シュタイナー/文
   イエルク・ミュラー/絵
   おおしまかおり/訳
   ほるぷ出版
   対象年齢 : 5歳から100歳まで



   くまが冬眠から目覚めると、森はなくなり、大きな工場が建っていました。
   工場の職長がやってきて、くまに向かって「ひげをそらないなまけもの、
   早く仕事にもどれ」と、どなります。
   くまは、「自分はくまだ」と主張しますが、「くまが工場にいるわけがない」
   と、くまであることをを否定されます。
   それから、動物園やサーカスのくまに会わされ、「囲いの中にいないのは
   くまじゃない」、「踊らないのはくまじゃない」と、
   自分を否定され続けます。
   とうとう、顔の毛(ひげ)をそり、工員服を着せられて、工場で働くはめに。

   くまは、くまであるということを捨ててしまいました。
   次の冬が訪れ、眠くてしょうがないくまは、工場を解雇されます。
   森に帰れたくまですが、もう自分というものを完全に見失っていました。
   「何か大切なことを忘れてしまったようだ」くまはそう言いながら、
   雪に埋もれていきます。

   風刺もこめられた滑稽な話ですが、もしかしたら、自分達も
   環境や言葉によって、自分というものをどんどん見失っているの
   かもしれないという、恐ろしさを感じます。
   親は子に自分の型を押し付ける、いじめや戦争や格差や
   社会のいろいろな仕組みによって、自分の価値や存在までも
   失われていく環境がつくられる。
   人は、勝手な都合によって、自分をも破壊する環境を
   自ら生み出しているように思えてきます。

   人間の傲慢さや自然破壊を批判する作品を書き続けている
   イエルク・シュタイナーとイエルク・ミュラー。
   他にも、「うさぎの島」など、各国で高く評価されています。


   (終わり)



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