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vol-65
本のタイトル: ぼくはくまのままでいたかったのに…… イエルク・シュタイナー/文 イエルク・ミュラー/絵 おおしまかおり/訳 ほるぷ出版 対象年齢 : 5歳から100歳まで くまが冬眠から目覚めると、森はなくなり、大きな工場が建っていました。 工場の職長がやってきて、くまに向かって「ひげをそらないなまけもの、 早く仕事にもどれ」と、どなります。 くまは、「自分はくまだ」と主張しますが、「くまが工場にいるわけがない」 と、くまであることをを否定されます。 それから、動物園やサーカスのくまに会わされ、「囲いの中にいないのは くまじゃない」、「踊らないのはくまじゃない」と、 自分を否定され続けます。 とうとう、顔の毛(ひげ)をそり、工員服を着せられて、工場で働くはめに。 くまは、くまであるということを捨ててしまいました。 次の冬が訪れ、眠くてしょうがないくまは、工場を解雇されます。 森に帰れたくまですが、もう自分というものを完全に見失っていました。 「何か大切なことを忘れてしまったようだ」くまはそう言いながら、 雪に埋もれていきます。 風刺もこめられた滑稽な話ですが、もしかしたら、自分達も 環境や言葉によって、自分というものをどんどん見失っているの かもしれないという、恐ろしさを感じます。 親は子に自分の型を押し付ける、いじめや戦争や格差や 社会のいろいろな仕組みによって、自分の価値や存在までも 失われていく環境がつくられる。 人は、勝手な都合によって、自分をも破壊する環境を 自ら生み出しているように思えてきます。 人間の傲慢さや自然破壊を批判する作品を書き続けている イエルク・シュタイナーとイエルク・ミュラー。 他にも、「うさぎの島」など、各国で高く評価されています。 (終わり) |