■■■ baby03  エミリーさんとまぼろしの鳥 ■■■




vol-60
   本のタイトル: エミリーさんとまぼろしの鳥
エミリーさんとまぼろしの鳥
   チャールズ・キーピング/作
   やぎたよしこ/訳
   ほるぷ出版(現在絶版)
   対象年齢 : 5歳から100歳まで



   チャールズ・キーピングは、英国の「第二次絵本黄金時代」を
   代表する絵本作家のひとりである。

   絵本は、文だけの物語よりも、絵により一層作者のイメージが
   強調され、読者は、より作者と近い視点で物を見ることになる。

   キーピングの作品を読むと、そのことを強く感じる。
   キーピングは自分のイメージを、絵により訴えかけてくる。
   その表現方法は、とても斬新で、柔らかな線や色さえも、
   独特の強さを持っている。

   都会に暮らすエミリーさんは、ひとり暮らしのおばあさん。
   エミリーさんは、ラティという、いかさま師に騙され
   「美しく鳴くというまぼろしの鳥」が欲しくなり
   色つきのすずめを買ってしまう。
   が、まぼろしの鳥は、一向に鳴かず、ぐったりしてしまう。

   すずめの色をとってやった後、「エミリーさんは
   はじめて、すずめが美しいのに気づいた」と書かれている。
   そのすずめの美しさが、エミリーさんに勇気をくれたようだ。
   エミリーさんは、すずめを助ける行動に出る。そして・・・
   エミリーさんの家は、すずめや子どもが訪れる賑やかな家となる。

   都会の片隅でひとり暮らしているエミリーさんとラティ
   それに、誰にもあまり見向きもされないすずめ。
   最後には、人々の姿は消え、美しいと表現されたすずめだけが
   大きく描かれる。
   そこには、孤独な者への哀愁と賛美のような感覚が漂う。

   キーピング作品は、芸術的な独特の世界が強調されるあまり
   馴染みにくいのか、、日本では、絶版絵本が多い。
   この「エミリーさんとまぼろしの鳥」は、
   心なごむシーンもあるので、比較的読みやすい。
   孤独な少年の内面が描かれる「まどのむこう」や「ジョセフのにわ」
   など、読む人を困惑させる衝撃的な傑作を残している。


   (終わり)



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