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vol-58
本のタイトル: ふゆめ がっしょうだん (かがくのとも傑作集) 冨成忠夫、茂木透/写真 長新太/文 福音館書店 対象年齢 : 5歳から100歳まで 木を見ると、木に向かって語りかけたくなります。 木は言葉は発しないのですが、すっーと爽やかな空気を送ってくれて 何かを答えているような気がします。 先日、阿蘇一の宮の「国造神社」で、「手野の大杉」という樹齢800年の 巨木を見たのですが、平成3年の台風で折れて枯れてしまったそうで 今は、ご神木となって、保存会の方々の手で、大切に保存されていました。 枯れてしまった木は、神々しいけれども、何も語ってはくれませんでした。 冬枯れた風景の中、淋しい気持ちになりました。 「ふゆめがっしょうだん」は、春になってこれから芽吹く冬芽たちの 楽しい絵本です。 えのきやさんごじゅ、くずなど24種類の木の冬芽が、 拡大写真で、1ページ毎に登場します。 うさぎやインディアンや王様のように見える冬芽の顔たちが、 笑って、こちらをみつめています。 どの冬芽も、「わたしを見て」と、歌っています。 「パッパッパッパッ」とあずさの冬芽が元気に相の手を入れます。 長新太さんには、冬芽の歌が聞こえたのでしょうか。 「春がくれば、もっときれいになるよ」 冬芽たちが、凍りつくような森の空気の中で歌う声が 今にも聞こえてきそうです。 人は木に魅せられます。 それは、木が冬枯れの後、芽吹く力をみせてくれるからだと 思います。 芽吹くことのなくなった巨木は、神社の森の中でひっそりと その役目を終えたかのようです。 (終わり) |