■■■ baby03  オットー 戦火をくぐったテディベア ■■■




vol-56
   本のタイトル: オットー―戦火をくぐったテディベア   オットー―戦火をくぐったテディベア (児童図書館・絵本の部屋)
   トミー・ウンゲラー/作
   鏡哲生/訳
   評論社
   対象年齢 : 4歳から100歳まで


   オットーはドイツの工場で作られた本物のテディベアです。
   そして、戦争という時代の様々な出来事を体験した
   ぬいぐるみです。

   まずはじめ、オットーの持ち主である、ユダヤ人のデビットが
   強制収容所に入れられます。その後、戦場で、兵士のチャーリーを助け
   銃弾に撃たれたり、ぼろぼろになりながら、戦後は、アメリカに渡たります。
   そして、デビッドや仲良しのオスカーと再会するのだけれど、
   二人は家族の中のたったひとりの生き残りだったり・・・と
   戦火の時代と、その後の奇跡の出来事をオットー自身が語ります。

   この物語を読みながら
   小さい頃より、幾度となく聞かされた両親の戦争体験を思い出しました。
   両親は、何度も何度も、戦時中の出来事を語ってくれました。
   その話ぶりは、あまりに淡々としていました。
   丁度この絵本のオットーの語り口と同じです。
   オットーは、人形という設定なので、感情がないという印象を持ちますが
   その時代は、人としての感情を押し殺し、怖い、つらい、悲しいなどという
   感情をこらえてなくては、生きていけない毎日だったと思います。

   戦争を日常の出来事として、淡々と語ることにこそ
   怖さがあるように思います。
   誰が何のために戦争をしているのか、市井の人々は
   わからずに、ただその時代を毎日一生懸命生きるしかないのです。

   オットーは、自分が巻き込まれた時代の出来事を
   残そうとペンをとります。
   そのことが、作者ウンゲラーの思いだと感じます。

   この絵本の主人公は、テディベアというかわいいぬいぐるみ、
   子どもたちの大好きな人形が銃で撃たれる場面も出てきます。
   (ただ、この絵本の中のオットーは、かわいさよりも理性的な性格で
   描かれていますが。)
   そこに、子どもたちにこそ、この物語を伝えたいという、
   ウンゲラーの思いが伝わってきます。

   淡々したお話の中に潜む怖さ、強いメッセージの残る絵本です。


   (終わり)



<< 一覧へもどる  << 絵本古本マーケットはっぴぃ  << SHOP