■■■ baby03  マドレンカ ■■■




vol-55
   本のタイトル: マドレンカ  マドレンカ
   ピーター・シス/作
   松田素子/訳
   BL出版
   対象年齢 : 5歳から100歳まで


   絵本の中には、空間と時間が存在します。
   時間は、読み手により、ゆっくり流れたり早く流れたり
   停まったり、戻ったりもします。

   絵が、読み手のイマジネーションを広げる手助けをします。
   絵本の空間は、イマジネーションにより無限に広がります。

   マドレンカのお話は、いきなり宇宙という言葉から始まります。
   その書き出しはこうです。

   「宇宙の中のある惑星のある大陸のある国のある町の
   ある建物のある窓の中に 
   ある雨の日、ひとりの女の子がいた。なまえは、マドレンカ」

   ピーター・シスの絵が、宇宙に浮かぶ地球から、
   ニューヨークに住むマドレンカにズームインした時、
   マドレンカの小さな一本の歯が今にも、抜けそうになれます。

   マドレンカは、この嬉しいニュースを知らせに近所をぐるりと一周。

   そこには、世界各国の人たちが住んでいます。
   パン屋のガストンさん(フランス)、新聞雑誌販売のシンさん(インド)
   アイスクリームやさんのチャオさん(イタリア)、
   お話いっぱい知ってるグリムおばさん(ドイツ) 
   八百屋のエドワードさん(ラテンアメリカ)、
   友達のクレオパトラ(エジプト)・・・・

   つぎづぎと、マドレンカの頭の中に、世界の風景が広がります。
   それは、のぞき絵風になっていて、穴の開いたページをめくるという
   しかけになっています。

   異国という言葉がありますが、まさにマドレンカの頭の中に広がる
   異空間を読者も一緒に楽しむことができます。

   マドレンカが、家に帰り着くと、もうずいぶん時間がたっていて
   お父さんお母さんが、「マドレンカどこに行っていたの」と聞きます。
   マドレンカは、「世界一周してたのよ」と言い、
   「わたし、歯が抜けたの」と、歯抜けの顔でニッコリ。

   マドレンカという小さな小さな宇宙、それは、両親とつながり
   地域とつながり、世界とつながり、宇宙とつながっている。
   一本の歯が抜けるという出来事は、マドレンカの成長という
   未来への広がりも感じさせます。
   そして、マドレンカのイメージの世界(子供の世界)は、
   空間も時間をも超えて、無限に広がっている。

   シスは、あらゆる手法で、時には楽しく、時には繊細に
   絵本を、大きな大きな空間へと変化させます。

   シスの絵本を最初に読んだのは、「The Three Golden Keys」
   英語の拾い読みでしたが、シスの描く不思議な世界に
   すっかりとりこになりました。
   絵は世界各国の共通語です。こちらもあわせて、おすすめです


   (終わり)



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