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vol-53
本のタイトル: サー・オルフェオ アンシア・デイビス/再話 エロール・ル・カイン/絵 灰島かり/訳 ほるぷ出版 対象年齢 : 5歳から100歳まで 西洋と東洋が程よく融和した、独特の世界を創り出す エルロール・ル・カインの作品は、絵本ならではのおとぎの世界に 連れて行ってくれます。 その世界の住人は、物語とカインの絵の中で、自分探しの旅に 出かけます。 「わたしは誰なのか」深い疑問が、カインの絵の中で不安と安堵を 繰り返します。 さて、「サー・オルフェオ」ですが、このお話の物語の起源は、ギリシャ神話。 その後、「ロマンス」と呼ばれる詩が、中世の吟遊詩人によって伝えられました。 その詩を、アンシア・デイビスが、短く再話している物語です。 サー・オルフェオという慈悲深い王様と、ヒュロディスという名の美しい お妃様の深い愛のお話です。 ある日、不気味な摩の大王が、お妃様を永久の眠りの国に連れて行って しまいます。王様は、王の身を捨てボロをまとい、竪琴だけを手にして、 吟遊詩人に身を落とし、お妃探しの旅に出ます。 長い年月の後、やっとお妃様と出会うことができ、摩の大王から お妃様を救うことができます。 王様のわが身を捨てた愛のお話が、美しく語られています。 そのお話を飾っているのが、古いケルトの文様や装飾を使った カインの絵です。 カインの挿絵で他の好きな作品に、「まほうつかいのむすめ」が あります。これは、作者のアントニア・バーバーが、ベトナム人の養女 Thi-Phi-Yen(チ・フィ・エン)のために書いた作品です。 まほうつかいのむすめは、何不自由のない生活を捨て 自分は誰なのか、自分探しの旅にでかけます。 同じように、サー・オルフェオも王の身を捨て、自分の求めている愛を みつける旅にでます。 むすめも王様も自分の居場所をみつけて、物語はハッピーエンドで 終わります。 が、自分にとって、自分探しは、絵本が閉じられた後から 始まるような気がします。大切なものは何なのか、自分にとって 必要なものは何なのか、考えている自分がいます。 それは、カインの絵の中の東洋の部分に心ひかれる自分に出会った せいかもしれません。 作品は、大人の読者も魅了します。 子どもも大人も、年代、時代、性別、人種を超え、感動する心は同じ ということに気付きます。 (終わり) |