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vol-34
本のタイトル: わたしの きもちをきいて(2)手紙 作:ガブリエル・バンサン 訳:もり ひさし 出版 : BL出版 対象年齢: 5歳から100歳まで この絵本にまずひかれたのは、ガブリエル・バンサンの線描と水彩の絵です。 バンサンは「アンジュール−ある犬の物語」でデビュー。 白黒で描かれた、迷い犬の悲しい瞳に、こころひかれた方も多いかと 思います。 デッサンを中心に美術の勉学をしたというバンサンの出現で、 絵本の世界が、また広がりました。 この絵本には、一話もあり、少し大人になりつつある少女が、 家庭になじめず、ママやパパも「わたしの気持ちをわかってくれない」と 森へ家出する物語です。 二話は、自分の気持ちを伝えようと、ママとパパあてに手紙を書くと いうストーリーです。 少女はある荒れ果てたお屋敷の庭に行き、手紙を書きます。 手紙を書いている最中、誰もいないと思っていたお屋敷に人影が見えます。 びっくりして逃げ出してしまう少女。 次の日、お屋敷の住人からの、少女あての手紙をみつけます。 お屋敷の住人は、そっと少女を見守っていました。 「宿題はテーブルでどうぞ」と手紙には、書いてありました。 手紙は、少女の気持ちをリラックスしてくれます。 少女は、自分の気持ちを綴った手紙を書き終えます。 -----------------------◇----◇----◇------------------------- 小さかった時のように、手放しで甘えることのできなくなった少女。 大人になることを期待しすぎて、少女との対応にとまどっている両親。 もう少し大人になれば、この過渡期を過ごした時のことも忘れてしまいそうな 小さなできごと、手紙さえも忘れてしまうかもしれません。 手紙はその時々の一番大切な気持ちを、一番大切な人に届けるものだと 思います。手紙には嘘は書けません。 そして、出した人よりも、もらった人の心に残るものではないでしょうか。 引き出しにしまった便箋とペンを出してみても、さて、自分の気持ちを 素直に書き溜めることのできた、少女時代にもどることは、むずかしそうです。 (終わり) |