|
vol-32
本のタイトル: わすれられないおくりもの 「教えてくれたこと」 作: スーザン・バーレイ 訳: 小川 仁央 出版社: 評論社 対象年齢: 5歳から100歳まで 最近、赤ちゃん誕生を描いた絵本、「いのち」についてストレートに伝える絵本が 多くなってきたように思います。 では、「老い」やその先の「永遠の別れ」については、どうでしょう。 この一般の文学でもむずかしいテーマに取り組んでいる絵本は少ないように 思います。 子どもには、未来があります。その子どもには、不似合いのテーマかも しれませんね。 本日ご紹介の絵本は、年老いたアナグマの突然の死を通して、 仲間の動物たちが、それをどう受け止めていくかということを、たんたんと描いた 作品です。同時に「生きる」ということの大切さも、心にしみる一冊です。 親切で物知りだったアナグマの突然の死に、深く悲しむ友達。 みんなは、アナグマの思い出を語りはじめます。 そして、みんな、自分が今できることは、すべてアナグマから教えてもらった ということを、思いだします。 自分たちの中に、アナグマの知恵や工夫が生きていることに気がつき、 だんだんと悲しみも消えていきます。 大なり小なり、人は何かを与えて生きています。 そして、与えられています。 たくさんの思い出の中には、たくさんの人が、存在するはずです。 助けあい、支えあい、影響しあっています。 「生きる」ということは、様々なシーンで共鳴しあい、誰かが誰かの思い出に なっていくこと、それは、悲しいことも嬉しいことも、幾重にも重なりあって、 一層深みを増した意味深いものとなっていきます。 最後にモグラはアナグマに「ありがとう」とお礼を言います。 そばでアナグマが聞いてくれているような気がします。 アナグマが教えてくれたことのほんとうの意味が何なのか、やさしい春風と 一緒に伝わってくるようです。 (終わり) |