■■■ baby03  わすれられないおくりもの ■■■

vol-32
   本のタイトル: わすれられないおくりもの

   「教えてくれたこと」

   作: スーザン・バーレイ
   訳: 小川 仁央
   出版社: 評論社
   対象年齢: 5歳から100歳まで


   最近、赤ちゃん誕生を描いた絵本、「いのち」についてストレートに伝える絵本が
   多くなってきたように思います。

   では、「老い」やその先の「永遠の別れ」については、どうでしょう。
   この一般の文学でもむずかしいテーマに取り組んでいる絵本は少ないように
   思います。

   子どもには、未来があります。その子どもには、不似合いのテーマかも
   しれませんね。

   本日ご紹介の絵本は、年老いたアナグマの突然の死を通して、
   仲間の動物たちが、それをどう受け止めていくかということを、たんたんと描いた
   作品です。同時に「生きる」ということの大切さも、心にしみる一冊です。



   親切で物知りだったアナグマの突然の死に、深く悲しむ友達。
   みんなは、アナグマの思い出を語りはじめます。
   そして、みんな、自分が今できることは、すべてアナグマから教えてもらった
   ということを、思いだします。

   自分たちの中に、アナグマの知恵や工夫が生きていることに気がつき、
   だんだんと悲しみも消えていきます。

   大なり小なり、人は何かを与えて生きています。
   そして、与えられています。

   たくさんの思い出の中には、たくさんの人が、存在するはずです。
   助けあい、支えあい、影響しあっています。

   「生きる」ということは、様々なシーンで共鳴しあい、誰かが誰かの思い出に
   なっていくこと、それは、悲しいことも嬉しいことも、幾重にも重なりあって、
   一層深みを増した意味深いものとなっていきます。

   最後にモグラはアナグマに「ありがとう」とお礼を言います。
   そばでアナグマが聞いてくれているような気がします。

   アナグマが教えてくれたことのほんとうの意味が何なのか、やさしい春風と
   一緒に伝わってくるようです。

   (終わり)



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