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vol-31
本のタイトル: せかい一わるいかいじゅう 「大人の理屈は通用しない」 作: パット・ハッチンス 訳: 乾侑美子 出版社: 偕成社 対象年齢: 4歳から100歳まで 「この世に存在する美しいものと醜いもの、もしこの世が醜いものだけだったら それは、醜いものでなくなる。反対に美しいものだけだったら、それはもう 美しいものでなくなる。」 (子どもとファンタジー/守谷慶子・著/新曜社より引用) 子どもは、大人と違い、醜いもの、汚いものにも、美しさや共感を感じる感性を 持っています。 大人にいつも支配されている子どもたちは、潜在的に、自分は不完全な存在と いう認識を持っていて、絶対的な完全なものよりも、むしろ不完全なものへ 愛着を示すように感じます。 かいじゅうのヘイゼルの家に、弟のビリーが生まれました。 家族のみんなは、ビリーが「せかい一わるいかいじゅうになる」と 言ってばかり、ヘイゼルにかまってくれません。 とうとうヘイゼルは、ビリーをよそのひとにあげて、 自分が、「せかい一わるいかいじゅう」と家族に認めさせました。 かいじゅうの国では、「わるい」ことは、「良い」こと。 人間の価値とは、逆転の世界でお話しがすすんでいくところが この絵本のおもしろさです。 子どもはヘイゼルの気持ちをすんなり理解することでしょう。 かいじゅうの醜い姿にかえて、 「わるい」ことが「良い」ことに変わったとしても ものごとの本質は何も変わらないと このお話しは、語りかけてくれます。 そんな、大人の理屈もふきとばして、明快に楽しませてくれるのが この絵本の魅力でしょうか。 (終わり) |